抗うつ剤(抗うつ薬)は、気分や意欲に関わる脳内の神経伝達物質の働きを調整し、うつ症状からの回復を支える薬の総称です。SSRIやSNRIなど複数の薬効分類があり、作用の現れ方も副作用の出方も種類によって異なります。効果を感じるまでには数週間かかることが多いとされ、効果と副作用のバランスをみながら医師と相談して調整していく薬です。「一度飲んだらやめられなくなるのでは」「性格が変わってしまうのでは」と、処方された薬を前に迷っていませんか。薬に不安を持つのは自然なことで、あなたが心配しすぎだからではありません。

この記事では、次のことがわかります。

  • 抗うつ剤とはどんな薬か、抗不安薬・睡眠薬との違い
  • SSRI・SNRIなど薬効分類ごとの特徴と、注意点として挙げられること
  • 効果を感じるまでの一般的な経過と、その間の過ごし方
  • 「依存」「性格が変わる」「一生飲む」という3つの不安の実際
  • 飲み始めに多い副作用と、医師に早めに相談したいサイン
  • 減薬・中止の考え方と、薬以外の治療との組み合わせ方

この記事の監修

星野 奈生子(精神科医)

抗うつ剤とは? 気分に関わる脳の働きを調整する薬

抗うつ剤とは、気分や意欲、不安に関わる脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)の働きを調整する薬の総称です。うつ病の薬物療法で主に使われる薬とされており、症状で消耗した心身が回復していく過程を下支えする役割を担います。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」でも、うつ病の治療で主に使われる治療薬は抗うつ薬であると説明されています。

なお「抗うつ剤」と「抗うつ薬」は同じものを指す呼び方です。医療機関の説明や添付文書では「抗うつ薬」と表記されることが多く、この記事でも同じ意味で用います。

気分を無理に引き上げる薬ではありません

「抗うつ剤を飲むと、無理に元気にさせられるのでは」というイメージを持つ方がいます。しかし一般に、抗うつ剤は健康な人の気分を高揚させるような性質の薬ではないと説明されています。落ち込んだ状態が続くときに、脳の働きの偏りを整えることで、本来のその人の状態に戻っていくのを助けるという考え方です。効き方はおだやかで、飲んだその日から大きく変わるというものではありません。

抗うつ剤が用いられる主な状態

抗うつ剤という名前から「うつ病だけの薬」と思われがちですが、実際にはそれ以外の状態にも用いられることがあります。たとえばSSRIと呼ばれる分類の薬は、うつ病のほか、全般不安症・強迫症・パニック症・心的外傷後ストレス症などにも用いられることがあるとされています。不安症状で受診したのに「抗うつ薬」と書かれた薬が出て戸惑う方がいますが、名前と用途が完全には一致しない薬である、と知っておくと混乱が減ります。

どの薬をどの状態に使うかは、国内で承認されている範囲の中で、症状・経過・体質・併用薬などをふまえて医師が個別に判断します。

抗うつ剤・抗不安薬・睡眠薬の違い

心療内科や精神科で処方される薬は、役割によって性質が大きく異なります。混同されやすい3つを整理します。

種類主な役割効き方の特徴使い方の一般的な考え方
抗うつ剤(抗うつ薬)気分・意欲の落ち込みや不安が続く状態に用いられる効果を感じるまでに数週間かかることが多いとされる毎日決まった形で継続し、経過をみて調整する
抗不安薬強い不安や緊張を一時的に和らげる目的で用いられる比較的すみやかに作用が現れるとされる漫然と続けないことが望ましいとされ、期間や量に注意する
睡眠薬寝つけない、途中で目が覚めるなどの不眠に用いられる服用したその晩の睡眠に作用するものが多い不眠の原因を確認しながら必要な期間だけ用いる

「すぐ楽になる薬」と「時間をかけて土台を整える薬」は別物です。抗うつ剤を飲んで数日で変化がないことを「効かない薬だった」と判断してしまうのは、この違いが知られていないためによく起こる誤解です。睡眠の悩みと薬の関係については、不眠に薬は必要?市販薬・睡眠薬・漢方の違いと受診の目安でも詳しく解説しています。

抗うつ剤の種類 — 薬効分類ごとの特徴と注意点

抗うつ剤にはいくつかの薬効分類(作用のしかたによるグループ)があります。ここでは特定の製品ではなく、分類ごとの一般的な傾向を整理します。実際にどの薬が選ばれるかは、症状、体質、他の病気や併用薬、副作用の出やすさなどをもとに医師が判断します。

薬効分類一般に言われる特徴注意点として挙げられること
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)現在最もよく使われている分類とされる。うつ病のほか不安症・強迫症・パニック症などにも用いられることがある飲み始めの吐き気・下痢・頭痛など。長く続けた場合の体重増加や性機能への影響が報告されている。急な中止で中断症状が出ることがある
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)SSRIと同程度の有用性・安全性を備えるとされ、副作用の傾向も似ているとされる吐き気、口の渇き。量によっては血圧の上昇。急な中止で中断症状が出ることがある
NaSSA・セロトニン調節薬眠気を伴いやすい一方、吐き気や性機能への影響が少ないとされるものがある眠気と体重増加。夜に服用する形がとられることがある
三環系・四環系(複素環系)古くから使われてきた分類。現在は他の分類が先に検討されることが多いとされる眠気、体重増加、口の渇き、便秘、排尿のしにくさ、立ちくらみなど。高齢者では強く出やすいとされる
MAOI(モノアミン酸化酵素阻害薬)他の薬で十分な変化が得られなかった場合に限って用いられることがまれにあるとされる食事内容の制限など特別な注意が必要とされる
その他の新しい分類従来の薬で変化が得られない場合の選択肢として研究・使用が進んでいる使用できる場面や国が限られる。使えるかどうかは医師が判断する

上記は海外の医学情報も含めた一般的な整理です。日本国内で処方できる薬の種類や対象となる状態は、国内での承認内容によって決まります。

いま中心となっているのはSSRI・SNRIなどの分類

MSDマニュアル家庭版では、SSRIが現在最もよく使用されている抗うつ薬の分類として紹介されています。SNRIやセロトニン調節薬なども、SSRIと同程度の有用性と安全性を備えているとされています。これらの分類が先に検討されやすいのは、効果の面だけでなく、副作用の負担が比較的軽いことや、飲み合わせ・過量になったときのリスクなど、安全性の面も考慮されるためと説明されています。

三環系・四環系は「古いから悪い薬」ではありません

三環系・四環系(複素環系)は、かつて治療の中心とされてきた分類です。現在では、眠気・口の渇き・便秘・排尿のしにくさといった副作用が出やすいことから、以前ほど広くは使われていないとされています。ただし、他の薬で十分な変化が得られない場合などに、いまも選択肢として検討されることがあります。「古いタイプの薬を出された=軽く扱われている」という意味ではありません。処方の意図が気になるときは、そのまま医師に尋ねて構いません。

種類が多いのは「合う薬が人によって違う」から

抗うつ剤の分類がこれだけ細かく分かれているのは、同じ診断名でも、効き方や副作用の感じ方に個人差があるためです。ある分類で吐き気が強く出た人が、別の分類ではその副作用が問題にならないこともあります。1つの薬で十分な変化が得られない場合に、別の分類の薬へ変更したり、複数を組み合わせたりする方法が検討されることもあるとされています。「最初の薬が合わなかった=もう打つ手がない」ではありません。

効果が出るまでどれくらい? 経過と、その間の付き合い方

抗うつ剤の多くは、効果が現れるまでに少なくとも数週間、定期的に服用する必要があるとされています。こころの情報サイトでも、抗うつ薬は継続して服用する必要があり、飲み始めてもすぐに効果は現れないと説明されています。ここが、痛み止めや解熱剤のような「その場で効く薬」と最も違う点です。

変化を感じるまでの一般的な流れ

経過には大きな個人差がありますが、目安として次のような順序で語られることが多くあります。副作用が先に出て、良い変化は後から追いついてくる、という時間差が起こりやすい点が特徴です。

時期この時期に起こりやすいとされること過ごし方のヒント
飲み始め〜1週間ごろ吐き気、眠気、頭痛など体の副作用が先に出やすい。落ち着かなさや不安が一時的に強まったように感じられることもあるつらさの内容と程度をメモしておく。強い変化があれば受診日を待たずに連絡する
2〜4週間ごろ睡眠や食欲など、体の症状のほうから先に変化を感じる人がいる「まだ効かない」と感じても、自己判断で量を変えたりやめたりしない
1〜3ヶ月ごろ気分や意欲の変化を自覚しはじめる時期とされる良くなってきた実感を医師に具体的に伝える
症状が落ち着いた後再発を防ぐ目的で、しばらく続ける形がとられることが多いとされる減らし方・やめ方の見通しを医師と一緒に立てる

MSDマニュアル家庭版では、再発を防ぐために症状が落ち着いた後も一定期間服用を続ける必要がある人が多いとされ、6〜12ヶ月という目安が紹介されています。ただし、実際にどのくらい続けるかは、症状の経過や再発の回数、生活の状況などをふまえて医師が個別に判断します。この記事の数字は目安であり、ご自身の服薬期間を判断する材料にはしないでください。

「効いている実感がない」と感じたときに確認したいこと

数週間たっても変化が乏しいと、不安と焦りが強くなります。そんなときは、次の点を診察で伝えると、次の方針が決めやすくなります。

1. いつから飲み始め、飲み忘れがどのくらいあるか

2. 睡眠・食欲・体の重さなど、気分以外の変化はどうか

3. 副作用としてつらい症状が出ていないか

4. 生活の中でストレスの原因が続いていないか

5. 「効かない」と感じるのは、何がどうならないことを指すのか

自分の変化は自分では見えにくいものです。家族から「最近少し表情が戻った」と言われて初めて気づく方もいます。判断材料が増えるほど、薬を続けるか、量や種類を検討するかの見極めがしやすくなります。

3つの大きな不安 — 依存・性格の変化・一生飲み続けること

抗うつ剤をためらう理由の多くは、次の3つに集約されます。誤解と、一般に知られていることを整理します。

よくある不安・イメージ一般に知られていること
やめられなくなる「依存」の薬では?抗うつ剤は、いわゆる依存が問題になるタイプの薬とは性質が異なるとされる。ただし急に中止すると中断症状が出ることがあり、やめ方は医師と相談して決める
性格が変わってしまうのでは?性格そのものを作り変える薬ではないとされる。一方で、感情の動きが平坦に感じられるといった副作用の報告があり、気になるときは相談の対象になる
一度飲んだら一生やめられない?再発予防のため一定期間続けたうえで、経過をみながら減量を検討する形が一般的とされる。期間は医師が個別に判断する
飲むとぼんやりして働けなくなる?眠気の出やすさは分類によって異なる。日常生活に支障が出るほどなら、種類や飲む時間の調整を相談できる
気合いで治すべきで、薬に頼るのは弱さでは?うつ病の背景には脳の働きの不調があると考えられており、意志の強さの問題ではないとされる

「やめられなくなる」=依存? 中断症状との違い

最も多い誤解が、中断症状(離脱症候群)と依存の混同です。抗うつ剤の一部では、急に服用を中止するとめまい、不安、いらだち、疲労感、吐き気、悪寒、筋肉痛などが現れることがあるとされています。これは「薬が欲しくてたまらなくなる」という依存とは別の現象で、体が薬のある状態に慣れていたところへ急な変化が加わったために起こると説明されています。

大切なのは、こうした症状は「やめられない」ことを意味しないという点です。医師と計画を立て、時間をかけて段階的に減らしていく方法をとることで、負担を抑えながら中止を目指せるとされています。自己判断で急にやめることが、結果として「やっぱりやめられない薬だった」という誤った実感につながってしまいます。

「性格が変わる」は本当?

抗うつ剤が性格そのものを変えるという説明は、一般的な医学情報では見られません。周囲から「別人のように明るくなった」と言われるのは、うつ症状によって覆われていた本来の反応が戻ってきた状態を指していることが多いと考えられています。

一方で、感情の動きが鈍く感じられる、涙が出にくくなる、といった変化が副作用として報告されている分類もあります。「感情が動かない感じが続いてつらい」という状態は我慢すべきものではなく、種類や使い方を見直す相談材料になります。変化に気づいたら、遠慮せず具体的に伝えてください。

「一生飲み続けるの?」

多くの場合、症状が良くなった時点ですぐ中止するのではなく、再発を防ぐ目的でしばらく継続する形がとられるとされています。そのうえで、経過が安定していれば減量・中止を検討していきます。再発を繰り返している場合や、症状が重かった場合には、より長い期間の継続が検討されることもあります。

つまり「一生飲み続けることが前提の薬」ではなく、「いつまで続けるかを経過に応じて医師と一緒に見直していく薬」と考えるほうが実態に近いといえます。見通しが分からないこと自体が負担になるときは、「今はどの段階か」「次に見直すのはいつごろか」を診察で確認してみてください。

抗うつ剤の副作用 — 飲み始めの症状、時間の経過、相談すべきサイン

薬である以上、抗うつ剤にも副作用があります。過度に恐れる必要はありませんが、知らないまま体験すると不安が大きくなります。あらかじめ「起こりうること」を知っておくことが、続けるうえでも、やめ時を判断するうえでも助けになります。

飲み始めに出やすい症状

SSRIでは、吐き気、下痢、手のふるえ、頭痛などがみられることがあるとされ、これらは多くの場合軽度で、続けているうちに薄れていくと説明されています。また、飲み始めの数週間は日中の眠気を覚えることがありますが、この作用は一時的とされています。飲み始めの数日から1〜2週間がもっとも副作用を感じやすい時期にあたるため、この期間の過ごし方を事前に医師と相談しておくと負担が減ります。

長く続けるときに気になる副作用

服用が長期にわたる場合には、体重の増加や性機能への影響(性欲の低下、オルガズムの遅れなど)が生じることがあると報告されています。分類によって出やすさは異なり、こうした副作用が起こりにくいとされるものもあります。言い出しにくい内容ですが、生活の質に直結するため、伝えれば調整の検討対象になります。診察で話しにくければ、メモを渡す形でも構いません。

早めに医師へ相談したいサイン

次のような変化があるときは、次の診察を待たずに医療機関へ連絡してください。

  • 吐き気やめまいが強く、食事や仕事に支障が出ている
  • 発疹、強い動悸、けいれん、高熱など、明らかにいつもと違う体の変化がある
  • 落ち着かなさやいらだちが、飲み始め・量の変更後に急に強まった
  • 気分が急に高揚し、眠らなくても平気な状態が続いている
  • 「消えてしまいたい」という気持ちが強くなった

とくに、飲み始めや量が変わった直後には、一時的に不安・落ち着かなさ・気分の落ち込みが強まったように感じられることがあると報告されています。子どもや若い世代では、この時期に自分を傷つけたい気持ちが強まる場合があることが知られており、周囲の見守りと早めの相談が勧められています。一方で、治療を受けないままうつ病が続くことにもリスクがあるとされ、使うかどうかは利点と負担を医師と一緒に比べて決めていくことが大切です。

死にたい気持ちが強いとき、自分を傷つけたくなったときは、ひとりで抱えず、すぐに相談してください。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)や、#いのちSOS(0120-061-338)などの公的な相談窓口が利用できます。緊急のときは119番や救急外来という選択肢もあります。

減薬・中止の考え方 — 自己判断でやめないことが最も大切

「体調が良くなったから、もう飲まなくていいはず」。この自己判断が、回復の途中でつまずく典型的なきっかけになります。こころの情報サイトでも、自分の判断で薬の量を増やしたり減らしたり中断したりせず、焦らずに服薬を継続することが勧められています。

なぜ急にやめてはいけないのか

理由は大きく2つあります。1つは、前述の中断症状(めまい、不安、いらだち、疲労感、吐き気など)が起こることがあるためです。もう1つは、症状が落ち着いて見えても、再発を防ぐ段階の途中である場合が多いためです。良くなった実感は、薬が働いていることの表れでもあります。土台が固まる前に外してしまうと、症状がぶり返しやすくなると考えられています。

やめ方は医師と計画的に

一般的には、次のような流れで減量・中止が検討されます。具体的な進め方や期間は、症状の経過や薬の分類によって異なるため、必ず医師の判断のもとで行われます。

1. 症状と生活の状態が安定していることを、一定期間かけて確認する

2. 中止を目指す時期の見通しを、医師と共有する

3. 段階的に減らしながら、体調の変化を観察する

4. 中断症状や症状のぶり返しが出たら、ペースを見直す

5. 中止後もしばらくは、再発のサインに気をつけて経過をみる

減薬の途中で不調が出ることは失敗ではありません。「その人にとってはもう少し時間が必要だった」という情報が得られたということです。

飲み忘れ・お酒・市販薬やサプリとの関係

日常で迷いやすい点も整理しておきます。飲み忘れに気づいたときの対応は薬によって異なるため、あらかじめ医師や薬剤師に確認しておくと迷いません。まとめて2回分を飲むといった自己判断は避けてください。

飲酒については、睡眠の質を下げ、眠気やふらつきを強める可能性があるため、控えるか量を相談することが一般的に勧められています。市販薬・漢方薬・サプリメントとの飲み合わせにも注意が必要です。たとえば、気分の落ち込みに用いられることのあるハーブのサプリメントには、処方薬との有害な相互作用が起こりうると指摘されているものがあります。市販のかぜ薬や鎮痛薬も含め、併用しているものは受診時にすべて伝えてください。

薬だけに頼らない — 環境調整・精神療法・生活リズムとの組み合わせ

抗うつ剤は治療の一部であって、すべてではありません。こころの情報サイトでは、うつ病の治療を考える前に、まず心身の休養がしっかりとれるよう環境を整えることが大事であるとされ、治療として薬物療法と精神療法が挙げられています。散歩などの軽い有酸素運動がうつ症状を軽減させることが知られている、とも紹介されています。

治療の柱内容位置づけ
休養睡眠と生活リズムを整え、心身のエネルギーを回復させる回復の土台。まずここを確保する
環境調整業務量・勤務時間の調整、配置転換の相談、休職などストレスの原因に直接働きかける
精神療法認知行動療法・対人関係療法など。受け止め方と対処の幅を広げる再発予防にも役立つとされる
薬物療法抗うつ剤などにより症状を和らげ、回復を下支えする単独ではなく他の柱と組み合わせる
運動などの生活習慣軽い有酸素運動、朝の光を浴びる、飲酒を控える補助的だが取り入れやすい

薬は「回復の土台を支える」役割

強い抑うつ状態では、休養をとることも、考え方を整理することも難しくなります。眠れない、食べられない、何も手につかないという状態のままでは、環境調整の相談すら負担になります。薬物療法は、その消耗した状態を立て直し、他の取り組みに向かえる状態を作る役割を担うと考えられています。「薬に頼るか、自力で頑張るか」という二者択一ではなく、回復のために使える手段を組み合わせる、という捉え方が現実的です。

費用の負担を抑える仕組み

治療が長くなると、費用の心配が続けにくさにつながります。使える仕組みを知っておくと、見通しが立てやすくなります。

仕組み内容相談先
医療保険抗うつ剤は保険診療の中で処方されるのが一般的で、窓口負担は原則1〜3割医療機関・薬局
自立支援医療(精神通院医療)継続的な通院医療費の自己負担が原則3割から1割に軽減される市区町村の担当窓口
後発医薬品(ジェネリック)同じ有効成分で価格が抑えられる場合がある。選べるかは医師・薬剤師に相談医療機関・薬局

自立支援医療には申請の手続きと要件があります。通院が続きそうだと感じた段階で、医療機関の窓口に相談してみてください。

受診・相談の目安 — 処方は医師の診察が前提です

抗うつ剤は医師の処方が必要な薬で、市販されていません。ドラッグストアやインターネットで似た効果をうたう製品を個人で入手することには、成分や品質が確認できないなどの危険があるため、避けてください。次のような状態が続いているなら、心療内科・精神科への相談を検討する目安と考えられています。

  • 気分の落ち込みや興味の喪失が2週間以上ほぼ毎日続いている
  • 眠れない、食べられない状態が続き、体重が変化した
  • 仕事や家事など、これまでできていたことに支障が出ている
  • 飲酒でつらさをまぎらわせることが増えている
  • 「消えてしまいたい」と感じる瞬間がある

いまの状態を整理してから相談したい場合は、うつ病診断症状チェックのようなセルフチェックが役立ちます。ただし、チェックはあくまで受診を検討するための目安です。診断も薬の要否も、医師の診察によって判断されます。結果が軽く出ても、つらさが続いているなら相談をためらう必要はありません。

オンライン診療という選択肢

「平日の日中に通院する時間がない」「待合室で知り合いに会いたくない」という理由で受診が先延ばしになる方は少なくありません。オンライン診療に対応した医療機関であれば、自宅からスマートフォンで受診できます。オンライン心療内科・精神科のメントアは、保険適用で、18時〜24時・365日、当日予約にも対応しています。診断書最短即日発行、お薬最短即日発送で、予約から診察までLINEで完結します。仕事を続けながら夜間に相談したい方にとって、選択肢のひとつになります。

なお、薬の種類や使い方は、オンラインでも対面でも、診察のうえで医師が個別に判断します。「この薬を出してほしい」という希望がある場合も、そのまま伝えて構いません。希望と医学的な判断をすり合わせながら方針を決めていきます。

よくある質問

抗うつ剤は効果が出るまでどのくらいかかりますか?

大半の抗うつ剤は、効果が現れるまでに少なくとも数週間、定期的な服用が必要とされています。睡眠や食欲など体の症状のほうが先に変化し、気分や意欲の実感は後から追いつくことも多いとされます。数日で変化がないことは「合わない薬」を意味しません。経過は診察で共有しながら判断していきます。

抗うつ剤に依存性はありますか?

いわゆる依存が問題になるタイプの薬とは性質が異なるとされています。ただし、急に中止するとめまい、不安、いらだち、吐き気などの中断症状が現れることがあります。これは依存とは別の現象です。やめるときは、医師と計画を立てて段階的に進める方法がとられます。

抗うつ剤を飲むと性格が変わりますか?

性格そのものを変える薬ではないとされています。周囲が感じる変化の多くは、症状で覆われていた本来の反応が戻ってきたものと考えられます。一方で、感情の動きが平坦に感じられるといった副作用の報告もあります。気になる変化があれば、我慢せず医師に伝えてください。

抗うつ剤の種類はどれくらいありますか? どれが選ばれますか?

SSRI、SNRI、NaSSA・セロトニン調節薬、三環系・四環系など複数の薬効分類があります。効き方や副作用の感じ方には個人差があるため、症状、体質、併用薬、副作用の出やすさなどをふまえて医師が選びます。1つで十分な変化が得られない場合、別の分類への変更が検討されることもあります。

体調が良くなったら自分でやめてもいいですか?

自己判断での中止は勧められていません。中断症状が出ることがあるほか、症状が落ち着いて見えても再発予防の段階の途中である場合が多いためです。やめたいと感じたら、その気持ちをそのまま医師に伝えてください。減らす時期と進め方を一緒に決めていきます。

妊娠・授乳中でも抗うつ剤は飲めますか?

妊娠中・授乳中の薬の使い方は、状態と薬の種類によって個別に検討されます。使わないほうがよいとされる薬もある一方、治療を中断することによる負担も考慮する必要があります。自己判断で中止や再開をせず、妊娠を希望する段階から医師に相談してください。

お酒や市販薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?

飲酒は眠気やふらつきを強める可能性があり、控えるか量を相談することが一般的に勧められています。市販薬・漢方薬・サプリメントとの飲み合わせにも注意が必要で、処方薬との有害な相互作用が指摘されているものもあります。併用しているものは、受診時にすべて医師や薬剤師へ伝えてください。

オンライン診療でも抗うつ剤は処方されますか?

診察のうえで医師が必要と判断すれば、オンライン診療でも保険適用で薬が処方されます。ただし、症状や経過によっては対面での診察が必要と判断される場合もあります。処方の可否や薬の種類は、診察内容に基づいて医師が個別に判断します。

まとめ

  • 抗うつ剤は、気分に関わる脳内の神経伝達物質の働きを調整し、回復を下支えする薬の総称です
  • SSRI・SNRI・NaSSA・三環系など薬効分類ごとに特徴と注意点が異なり、どれを使うかは医師が個別に判断します
  • 効果を感じるまでには数週間かかることが多く、副作用が先に出て良い変化が後から追いつく時間差が起こりやすいとされています
  • 「依存」「性格が変わる」「一生飲む」は誤解を含みます。急な中止で起こる中断症状は依存とは別の現象です
  • 減薬・中止は自己判断で行わず、医師と計画を立てて段階的に進めることが勧められています

薬に不安があること自体は、治療の妨げにはなりません。むしろ、その不安を診察でそのまま言葉にできることが、自分に合った治療にたどり着く近道になります。分からないまま抱え込まず、次の診察で1つだけでも質問してみてください。

出典・参考文献

つらい症状が続くときは、ひとりで抱え込まずご相談ください。メントアは保険適用のオンライン心療内科・精神科です(18時〜24時・365日、当日予約可)。

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FAQ

心療内科・精神科に関する
よくある質問

仕事帰りでも受診できますか?夜間診療の有無を知りたいです。

クリニックによっては、お仕事をお持ちの方でも通いやすいよう夜間外来を設けている場合があります。当日の最終受付時間や診療曜日は、各院の案内をご確認ください。

今日すぐに診てもらいたいのですが、当日でも受診できますか?

多くのメンタルクリニックは予約制ですが、症状の急変など緊急を要する場合は、当日枠で対応可能なケースもあります。まずは電話やWebサイト等で現在の空き状況を問い合わせるのが確実です。

女性の先生に診察をお願いすることは可能でしょうか?

はい、女性医師が在籍しているクリニックでは、指名や担当日の選択が可能です。公式ホームページの医師紹介欄を確認するか、予約時に「女医を希望」と伝えておくとスムーズです。

漢方薬による治療は受けられますか?

西洋薬だけでなく、体質や症状に合わせた漢方薬を処方しているクリニックも多くあります。「なるべく自然な薬を使いたい」などのご希望があれば、診察時に医師へご相談ください。

診察にかかる費用が気になります。保険は使えますか?

基本的に健康保険が適用されるため、自己負担3割程度で受診いただけます。初診料や処方箋の有無で前後しますが、一般的な目安として数千円程度(4,000円〜6,000円前後)を見ておくと安心です。

診断書を書いてもらうことはできますか?

基本的には、医師が必要と判断した場合、職場や学校に提出するための診断書を発行してくれます。予約時や診察中に「診断書希望」と伝えておくとスムーズです。

初めての受診で、うまく話せるか不安です。準備は必要ですか?

全てを完璧に話そうとしなくても大丈夫です。「いつから」「どのような症状で困っているか」を簡単で良いのでメモしてお持ちいただくと、伝え漏れがなくなり、診察がよりスムーズに進むでしょう。

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